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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第53章 天命


(光秀目線)

(熱い)


異常な熱さに意識がふわりと浮上した。
身体が金縛りにあったように動かない。

身体の内側が煮えたぎるように熱い。

それに対し外気に触れる皮膚からはぞくぞくとした寒気を感じる。


(怪我で熱を出しているのか。ここはどこだ)


身体の状態を把握し、目を開けてみるとゴツゴツとした岩肌が見えた。
火が焚かれているのか不規則に岩肌を照らし、陰影をつくっている。


(助けられたようだな)


熱が這い回る頭は上手く働かない。
意識を失う瞬間の幼子の顔だけは明確に思い出せた。


(あれは夢だったのか?)


なんとも胸が湧きたつ儚い夢だった。
淡く揺らめく気持ちから目を逸らした。


(届かぬ想いをいつまで引きずるつもりだ)


自嘲していると、


?「……目を覚ましたか」


唐突に話しかけられた。


(この声、どこかで…)


以前聞いた事のある声だが、すぐに思い出せない。

眼球だけをそちらにゆっくり動かす。

と、すぐ傍に横たわる男を視認して…目を瞠(みは)った。


(上杉…謙信っ!)


2年前に行方不明になり、今度こそ死んだと思っていた男がそこに居た。


(二度も死んだふりをして、今更現れたか)


状況を考えれば手当てしてくれたのはこの男に違いない。
どうしてと思っても熱に浮かされ、流石に考えがまとまらなかった。


謙信「わかっているだろうがお前は深手を負っている。
 ここに運び込んで丸一日眠ったままだった」

??「謙信様?」


少し離れた場所からもう一人の声がした。
謙信は頭だけあげてそちらに声を掛けた。


謙信「佐助、明智が目を覚ました。水と薬をもってこい」

佐助「はい」


静かに空気が揺れ、見覚えのある上杉の忍びが姿を現した。

舞が安土を去った後、この佐助に事情を聴きたいがために手を尽くした。


(この忍びもまた姿を消して、八方ふさがりになってしまったがな…)


あれだけ手を尽くしても見つからなかった男が目の前に居る。

皮肉なものだと頭の片隅で笑っていると意識がまた沈んでいく。


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