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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第51章 捻じ曲がる真実



パチャ…


その反動で光秀は一歩崖に近づき、足元で泥水が跳ねた。


光秀「三成、連れて行け。お前の主人を必ず生かせよ」


三成は覚悟を決め秀吉の腕を掴んだ。


秀吉「三成っ、はなせ!」


乱暴に腕を振りほどいて秀吉は怒鳴った。


秀吉「馬鹿なこと言うな!お前はずっと汚ねえ仕事ばっかしてたけど、お館様を裏切るような男じゃない!
 お前の心根は腐ってなんかいなかった!

 身も心も削って仕事をしてたやつを謀反人なんかにできるかっ!」

光秀「俺を信じてくれて光栄な話だが、真実はどうかわからぬものだぞ?」


煙に巻く口調はいつも通りだが、秀吉を見る目は今までにないほど清々しく、優しいものだった。


秀吉「日ノ本中の人間がお前をどう言おうと、俺は信じる!
 お前はお館様を裏切ってなんかいないっ!俺は光秀を信じる!」

三成「っ、それは私も同じです、光秀様」


物言わず見返す光秀の目は、腹を決めた静かさを湛えている。

秀吉はたまらず、叫んだ。


秀吉「『あいつ』はっ、お前のこと『大好き』って言ったんだ。最後まで諦めるなよっ」



『……意地悪されても、本当は気遣ってくれるわるたんが、姫たんは大好き』



あの広間に居た者達だけが知る言葉だった。

光秀は琥珀色の瞳を柔らかく細めた。


光秀「やれやれ、暑苦しい主従だな。いいから世間には俺が言った通りにしろ。
 そうした方がいいと何故か感じるのだ。

 俺は、お前たちのその言葉だけで充分だ」


頭上で雷がゴロゴロと鳴り、光秀は頭上を仰いだ。
打ち付ける雨で顎から水がぽとぽとと滴(したた)り落ちる。


怜悧な顔は汚れているにも関わらず美しかった。


光秀「俺はお館様の供をせねばならん。
 秀吉、三成。俺の命を無駄にするなよ。
 九兵衛が正気を保っていたら、好きに生きろと伝えてくれ。


 俺の命、上手く使って上へ駆けあがれ」


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