第51章 捻じ曲がる真実
『……いい子だ。行くぞっ』
撃たれたなんて気配もさせず、秀吉と三成を救い出した。
秀吉「なんでっ、いつも意地悪いことばっか言ってたお前が、俺を助けるんだ!」
三成「秀吉様…」
三成が耐えるように唇を噛んでいる。
出血を抑えるために腰にあてた布は直ぐに血で染まってしまった。
一刻も早く手当が必要な状況だが、この場所は進むことも退くこともできない。
光秀「……っ、ひ、でよし」
瞼をおろしたまま光秀が口を開いた。
秀吉「光秀!?」
三成「光秀様!」
二人の呼びかけに光秀の口元にわずかに笑みが浮かぶ。
光秀「さっきから黙って聞いていれば、人を死人扱いするな。
いいか、土砂がどこまで流れ込んだか見えないが、山の東側の斜面はゆるい。お前達なら、行けるはずだ。
半刻(1時間)程も下れば村人達が使っている山道にぶつかる。三成、お前ならこの辺の地形が頭に入っているだろう?
ただし山崩れがまた起きるとも限らん。
気を付けて………行け」
秀吉の眉間に深いしわが刻まれた。
秀吉「行けって、お前はどうすんだ!
お前が嫌だって言っても連れてくぞっ!」
瞼がわずかに持ちあがり、琥珀色の瞳が鋭く秀吉を睨みつけた。
光秀「判断を誤るな。お前達二人だけなら助かる可能性がある。
俺を担いだまま下れるような斜面じゃない」
三成「っ」
地形を把握している三成はわかっているのか顔を歪めた。
光秀「俺は助からん。行けっ」
秀吉の胸板を力なく押す手は、泥が爪にまで入り込み汚れている。