第51章 捻じ曲がる真実
バケツをひっくりかえしたような雨は降り続き、昼前だというのに辺りは薄暗い。
光秀は行き止まりの崖の傍で足を止め、振り返った。
土砂崩れはまだ続いているが、その流れる方角からここは大丈夫だろうと目星をつけた。
光秀「座っていろ。ここは崖の傍だ。
見えない目で動くと落ちるぞ」
二人は言われるままに座ると、そこは草が生えていて濡れはするが泥で汚れることはなかった。
頭上に繁っている木々の葉が、強い雨を少しばかり防いでくれる。
秀吉「光秀!わかるように説明しろっ!
一体何があったんだ!」
光秀の声がした方を睨みつけ、秀吉が問いかけた。
視界はまだ曇り、ぼんやりとしか見えない。
秀吉は苛立たし気に片手で両目を覆った。
光秀「知らぬうちに事実が捻じ曲がり、その捻じ曲がった物事が真実かのように成り立っていく。
人間の手によるものだとしたら見事な手腕だが、人知を超えた力でなくては為せないようにも思える。この日ノ本で何が起きているのか、俺にもわからん…」
三成「…?それはどういう意味ですが?」
秀吉が顔をしかめ、怒りをそのままに拳を地面に打ち付けた。
秀吉「いつもいつもお前はどうしてそういう言い方なんだ!
俺は!お前が、信長様をっ、本当に裏切ったのか!
それをはっきり聞きたいんだ!!」
光秀「俺は……っ」
ふいに言葉が切れ、ばしゃっと水が跳ねる音がした。
そのあと時間がたっても何も聞こえてこず、二人は首を傾げた。
秀吉「……光秀?」
返事はない。
三成「秀吉様っ、雨と土砂の匂いで気づきませんでしたが血の匂いがします!」
秀吉「まさか……くそっ」
二人は強く瞬きを繰り返した。そのうち霞がかかったような視界が徐々に回復してきた。
三成「っ、光秀様!」