第51章 捻じ曲がる真実
ゴゴゴゴゴともズズズズと聞こえる、山が動く音。
それが聞こえていながら秀吉の隊は動けずにいた。
秀吉「この音はなんだ!?くそっ、目が見えねぇ!」
三成「っ!」
三成は粗方の予想が立っているのだろうが目が見えなくてはどちらに逃げて良いのか判断できないのだろう。
光秀は舌打ちし身を起こした。
光秀「秀吉、三成!!俺の声がする方に走れっ!!」
即座に二人は反応し、顔を光秀の方に向けた。
追手1「おいっ、今の声はもしや?」
追手2「明智だっ!明智が近くに居るぞっ!」
騒めく男達を無視して光秀は声をはりあげた。
光秀「こっちだっ!!早くっ!死に物狂いで走れっ!」
土砂が木々をなぎ倒しながら秀吉達に迫っている。
光秀「急げっ!!」
二人は見えない目を光秀に向け、走りだした。
時々足を取られながら真っ直ぐに駆けてくる。
たった今まで二人が居た場所に勢いよく土砂が流れこんだ。
間一髪だった。
光秀はホッと息を吐き、目が見えない二人に向かって駆け寄った。
パーーーーーーン
秀吉と三成は乾いた銃声を聞いたが、状況が見えない中、光秀の声だけを頼りに走り続けた。
光秀「……いい子だ。行くぞっ」
落ち着きはらった低い声が響き、秀吉と三成は氷のように冷たい手に導かれ走り続けた。
秀吉「てめえ、俺をガキ扱いすんな!」
三成「光秀様、今の銃声は?」
光秀「…さあな、誰かの銃が暴発したんじゃないのか?
まあ、全員生き埋めになってしまったようだが」
いつもと変わらない淡々とした声で光秀は答えた。