第51章 捻じ曲がる真実
(秀吉か……)
???「今朝の目撃証言からまだこの辺に居ると思われますが予想以上に早く移動されているのかもしれません。
急ぎましょう、秀吉様」
普段は朗らかな声色が緊張で張りつめられている。
(三成も一緒か。さてどうしたものか)
馬鹿正直に姿を表せば秀吉の傍に控えている鉄砲撃ちにやられてしまう可能性がある。
今まで出会った追手は『生死を問わない』という命の元、容赦なく攻撃してきた。
一旦やり過ごし、気づかれないように後を追い、直接接触を試みるしかない。
秀吉と三成なら問答無用で手打ちにする可能性は低い。
光秀はそう踏んで、見つからぬよう身を小さくした。
雨はいよいよ強くなり、秀吉が率いている隊の者も大声で話さなければ会話もままならないほどだ。
ゴロゴロゴロゴロ……
不気味な音が聞こえ、光秀は視線だけを頭上に動かした。
木々の枝葉の間から真っ黒な雲が見えた。
(ついさっきまで遠くで鳴っていたというのに随分と駆け足できたものだ)
秀吉と三成も空を見上げている。
秀吉「ますます天気が悪くなってきたな。
あいつ、大丈夫なのか?」
崇拝していた信長の敵(かたき)を追ってきたにしては、秀吉の言葉には気遣う様子があった。
三成「一旦引き上げましょう。この天気では遭難してしま
三成が進言している最中に辺りが真っ白な閃光に包まれ、直後に鼓膜を震わせるような衝撃が地面を揺らした。
ドーーーーン
光秀「!?」
秀吉・三成「!!!」
光秀はたまたま目を細めていたため、目を庇うことができた。
だがそうではなかった秀吉の隊は目をくらませ、全員が目を押さえている。
秀吉「っく、雷が落ちたのか」
三成「秀吉様、ご無事ですか?皆さん、そのまま待機してくださいっ!」
そう指示を出す三成も目がくらんで何も見えていないようだ。
光秀「っ!!」
唯一状況を知り得たのは光秀だけだった。
秀吉達が立ち往生している場所の傍に雷は落ちた。
鬱蒼と木が生い茂った山肌は、長く続いた雨で脆くなっていて、雷でさらに大きな衝撃を受け
………ついに崩れ出した。