第50章 絶対絶命
信長「っ!?」
総毛立つような気配がして、その場を飛び退った。
ドーン、という轟音とともに屋根に大穴があき、畳やその下の床板にまで穴があいた。
砕けた瓦や木片がバラバラと音をたてて落ちてくる。
信長「雷が落ちたのか!?」
さっきまで座っていた座布団は、一瞬のうちに半分以上焼失し、残っている部分も真っ黒に焦げていた。
あのまま座っていたならと流石の信長も肝を冷やした。
蘭丸「信長様、ご無事ですかっ、うわっ!?」
襖が開いた途端、誰も踏み入れさせないというように雷が落ちてきた。
蘭丸は雷の直撃は避けられたものの廊下の向こうに吹き飛ばされた。
蘭丸「いったい何が…」
蘭丸は顔をしかめ身体をおこすも、信長に動くなと制された。
雷が落ちた場所から火の手が上がり始め、外からは家臣達が心配する声が聞こえてきた。
『火の手が!』『水を持ってこい!』と慌ただしい気配が伝わってくる。
信長が窓を開けて命を下そうとすると
カッ
辺りが真っ白になり、直後雷鳴が響き渡った。
信長「っ!!」
信長が身を翻すのと、その場に雷が落ちるのが同時だった。
蘭丸「信長様っ!!」
信長「蘭丸、貴様は逃げろ。不在の光秀に代わり、消火の指示を出せ!」
蘭丸「何を言ってるんですか!?信長様も一緒に逃げましょう!」
大きな目がこぼれんばかりに開き、蘭丸はこちらに駆け寄ろうとしている。
信長「ならん!!この部屋に入ったら最後、出られなくなるぞ」
その言葉を証明するように信長が出入口に近寄ろうものなら狙い定めたように雷が落ちてくる。
蘭丸の顔が蒼白になった。
蘭丸「雷が人を狙うなんて!」
信長「行けっ!まとめる者がおらねば消火が遅れる。
俺が部屋から出られぬのであれば火を消すしかあるまいっ」
蘭丸「っ!すぐ戻って参りますっ!」
動揺していた蘭丸だったが意を決し去っていった。