第50章 絶対絶命
光秀「お館様。ネズミ一匹通れぬよう、警備の者を配備致しました。
寺の中には不審な点はございませんでしたので、これより周辺の安全確認に行って参ります」
信長「お前らしからぬ厳重さだな」
光秀「どこぞの世話焼き男にくれぐれもお館様を守るようにと耳に大だこができる程言われまして…」
信長がからかうと、光秀はやや呆れを含んだ口調で言った。
顔を合わせる度にそう言われたのだろうと、蘭丸は気の毒に思った。
蘭丸「秀吉さんも一緒に来たがっていましたもんね。
俺も『お館様を頼むぞ』って何回も言われたよ。出発間際まで言うんだもん、まるで子供を心配するお母さんみたいだよね。
信長様はとっても強いのに、何でいつもあんなに心配してるんだろう」
理解できかねると言いたげに蘭丸は目をしばたかせた。
光秀「人を心配するために生まれてきた人間だと思うしかないだろうな。
ではいってくる。蘭丸、すぐ戻るからそれまでお館様を頼むぞ」
蘭丸が『はーい!』と元気よく返事をすると、光秀は冴え冴えとした香りだけ残し、去っていった。