第50章 絶対絶命
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本能寺に到着した一行は先の襲撃のこともあり、寺を幾重にも囲うように物々しく見張りをたてた。
光秀自らが内部をあらためて安全を確かめている。
信長「やりすぎだ」
早々に部屋に入った信長の傍には蘭丸が控えていた。
信長は脇息にもたれ、眉をひそめている。
蘭丸「天下統一を目前にしている信長様の命を狙う輩は多いんです。用心にこしたことはないですよ、信長様」
蘭丸は本願寺再興を果たした顕如の使いとして、天下統一を進める信長の小姓として、堂々と行き来している。
顔を合わせると一触即発になる二人の間を取り持って、互いに不干渉という状態に収めたのは蘭丸の働きによるものだ。
信長「2年前はお前の手引きあって、顕如に命奪われそうになったが…変わったものだな」
その言葉に責めている響きはなかった。むしろ愉快だという表情をしている。
蘭丸は気まずそうに視線を下げ、
蘭丸「それはそうですが…」
と言葉を続けられない。
顕如と信長の間で迷いが生じたままだった過去の蘭丸。
迷いがあったゆえ、先の本能寺の火災で大けがを負ってしまった。
死を覚悟した瞬間、自らの行いは愚かだったと悔い、怪我が治ってからは我武者羅に動きまわった。
結果は信長と顕如、互いを不可侵とする。という良い結果にまとまった。
信長「もう済んだこと。気にしている暇があるなら、俺と顕如の間でうまく立ち回り続けろ」
蘭丸「はい!」
話が終わるのを待っていたかのように襖の向こうから声がかかった。
蘭丸が襖を開けると光秀が控えていた。