第50章 絶対絶命
私の着物を握る龍輝の手に力がこもった。
雷に驚き、怖いのを必死に我慢しているに違いない。
小さな身体を抱きしめてあげたいのを堪え、謙信様と佐助君の手を握り続けた。
雨が降りだし、ワームホールが発生する条件は揃ったのに、私達は畑に立ったままだ。
(失敗?)
(やっぱり私に力があるなんて気のせいだったんじゃ…)
…不安が募った時…
グニャ
視界が大きく歪んだ。
佐助「しっかりつかまって!」
謙信「っ!」
信玄「っと!」
「わっ」
身体がフワリと浮き上がった拍子にバランスを崩した。
龍輝を抱っこしてリュックまで背負っている手前、体勢を戻せない。
グイ!
左右同時に力強く支えられ、体勢が元に戻った。
「謙信様、佐助君、ありがとう。タイミングバッチリだね」
ワームホールの真っ白な空間の中で口を利くなんて初めてだ。
1度目は気を失い、2度目は死にかけていた。
3度目にしてやっとワームホールの中を確認できた。
それもこれも私を支えてくれる人が居るからだ。
(6人のタイムスリップは不安だったけど、皆がいると心強いな)
佐助君が髪を靡かせ口元を弛めた。
佐助「もちろん、俺は謙信様の忍びだからね。タイミングを合わせるのは得意だ」
謙信「何を言っている、佐助。俺がお前に合わせてやっているだけだ」
信玄「おいおい、こんなところでよく言い争う気になるな」
「…どこにいっても相変わらずですね」
少しだけ気が緩んだ時だった。