第50章 絶対絶命
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畑に到着したので子供達を抱っこし、大人はお互い離れないように丈夫な紐で繋ぎ合った。
そのまま待機していると、時計を見ていた佐助君が少し緊張した面持ちで私を見た。
佐助「時間だ、舞さん」
トクン
皆の視線を受けて、心臓が跳ねる。
(大丈夫…)
隣に立つ謙信様を見上げるとひとつ頷いてくれた。
謙信様に抱かれている結鈴と、私にしがみついている龍輝の頭を撫でてから…すーっと大きく息を吸い込んだ。
「手を繋いでください。結鈴と龍輝はしっかり掴まってて」
右手を謙信様が、左手を佐助君が強く握ってくれた。
目の前に立つ信玄様は、言葉はなくても見守ってくれている。
空は所々に星空が見える薄曇り。自然発生に任せてしまえばワームホールは開かないだろうと容易に想像できる空模様だった。
それを見ながら祈った。
(ワームホール……私達をもう一度あの時代に連れて行って)
(お願い…)
しばらく祈っていると周りの空気が不自然な動きを始めた。
ひゅうぅ
風は徐々に強まり、沢田さんの畑の作物が煽られて倒れていく。
佐助「台風の目に入ったらこんな感じなんだろうな」
左隣に居る佐助君が辺りを見ながら呟いた。
風は私達を中心に吹き、風が吹き荒れる様子を他人事のように見ていられる。
私は祈り続けた。
燃え盛る本能寺、初めて謙信様に出会った夜の森。
突然連れて行かれた安土城、そこで出会ったかけがえのない人達。
(あの時代に……行きたい)
妊娠発覚を恐れて嘘を通したままお別れしてしまった政宗と家康に…
私に想いを寄せてくれた三成君や光秀さんは傷つけてしまうかもしれないけど……
戻って来いと言ってくれた信長様と秀吉さんに…
(会いたい)