第3章 看病一日目 可愛いは褒め言葉
止めようとする謙信様をさらっと受け流し、佐助君は重箱の料理に手をつけた。
佐助「美味しいね、とても。こんな体じゃなければたくさん食べられたのに、残念だ」
そう言いながらも佐助君はパクパクと美味しそうに食べてくれる。
「ふふ、食べてくれてありがとう」
持ってきたものが無駄にならずに良かったと嬉しくなる。
佐助君が食べるのを見ているとつい頬が緩んだ。
残っていた片付けを済ませて、食後のお茶と佐助君の薬をお盆に乗せて持っていく。
「謙信様遅くなって申し訳ありません。食後のお茶をお持ちしました。
佐助君は苦いけどこの薬湯も飲んでね」
耳元に口を寄せて『家康が作り置いていったものだよ』と教えてあげる。
案の定、佐助君は目を輝かせた。
佐助「それは嬉しい限りだ。味わって飲ませてもらうよ」
「…味わうのはよしたほうがいいよ。
私も飲んだことあるけど、その薬すごく苦いし」
佐助君の家康愛を目の当たりにして吹き出してしまった。
二人の食器を片付けた後はお部屋の掃除にとりかかった。
一刻程かけると古びた部屋ながら、清潔感のある過ごしやすい部屋になった。
休む間もなく夕餉の準備に入る。
夕方には帰らなければいけないので、夕餉の時間に温めれば食べられるものにする。
佐助君は家康の薬を飲んで少しすると、
佐助「解熱剤が切れてきたみたいだ。高熱がでた時以外は滋養の薬だけにするよ。特効薬ができる前は皆そうして治していただろうし」
と言って布団に入った。
横になる時に支えてあげると佐助君の体が熱いのがわかった。ご飯を食べていた時に比べると顔がほてって目が潤んでいる。
「昨夜みたいになる前にちゃんと飲んでね?解熱剤はここに置いていくから。
何かして欲しい事があったら言ってね」
佐助「ありがとう、舞さん」
布団をかけてあげて、眼鏡をかけたままだった佐助君からそれを外す。
「おやすみなさい。いっぱい寝てね」
元気づけるように佐助君の頭をなでてあげる。
額に濡れ手ぬぐいをのせてあげると気持ちよさそうな表情をして直ぐに寝てしまった。