第50章 絶対絶命
外に出て玄関に鍵をかける。この鍵も念のためスペアキーを作り、全員に配っておいた。
夜空を見上げるも嵐の気配はない。
(大丈夫かな)
佐助「もう少ししたら移動しよう。声をかけたらワームホールが開くように、願ってくれる?」
ワームホールの発生場所は謙信様達が降り立った沢田さんの畑だ。
「うん、ちゃんと開いてくれるかな」
佐助「自然発生と君の力との合わせ技だ。大丈夫、もし開かなくても次の機会を狙えばいいだけだ」
そう言われると肩の力が少しだけ抜けた。
「そうだね。この家もまだ使えるし。失敗したら戻ってくればいいよね」
二度と戻らないつもりだけど、何がきっかけで戻って来るかわからないので、家はひきはらわなかった。
二階建ての家の外観、祖父や父が世話していた庭木や鉢植えを眺めて歩く。
車は売ったので駐車場はがらんとして寂しい。
駐車場から玄関に続くアプローチや、外の水道の蛇口、結鈴と龍輝が生まれた時に植えた蜜柑の木。
ちょっとした物を見ているだけで胸が苦しくなった。
結鈴「蜜柑、オレンジになってるから持ってく」
龍輝「いーなー。じゃあ、僕も」
信玄「一個ずつにしろよ?お前たちは抱っこで行くんだから、たくさん持つと潰れるぞ」
そう言いながら、信玄様もひとつ蜜柑をもいで袂に入れた。
結鈴・龍輝「「はーい」」
結鈴と龍輝が信玄様にじゃれついている。
(この時代とはお別れだけど謙信様と子供達がいれば、そこが私の居場所になる)
これからどこへ行こうと。
(よし、行こう!)
特製の抱っこ紐を手に取る。
子供達は抱っこ紐を使う年齢じゃないけど、ワームホールに飛び込むとなるとしっかり固定しておきたかった。
通常の抱っこ紐に手を加えて補強した。
それを2つ用意して、私は龍輝を、謙信様は結鈴を抱っこすることになっている。
謙信「舞」
呼ばれて振り返ると、謙信様が私と同じ抱っこ紐を手に持ち、歩み寄ってくるところだった。