第50章 絶対絶命
「現代の服も似合っていましたけど、皆さんには着物がしっくりきますね」
謙信様と信玄様がそれぞれ緩く頷いた。
謙信「着替えや手入れの手間は断然こちらの服だが、着物の方が落ち着く。
それにやっと刀をさせる」
謙信様は嬉しそうに言って、ずっと出番がなかった愛刀の重みを噛みしめている。
1年前は痩せてブカブカしていた着物を、今はきっちりと着こなして立派な佇まいだ。
(着物姿の謙信様、素敵…)
外套の白いモフモフの毛を見ていると、長屋で謙信様と佐助君と過ごした日々を思い出した。
信玄様は謙信様より大きな刀を持ち、病人だったとは思えない堂々たる立ち姿だ。
相変わらず胸元が少し覗く着こなし方で、ドキドキしてしまう。
信玄「姫、君だって着物姿が板についているぞ?
現代の装いも良かったがその桃色の着物、似合ってるよ。
不思議だな…君はこちらの人間なのに着物の方が似合ってるなんて」
「そ、そんなに褒めないでください。恥ずかしいです…わっ」
謙信様が咳払いして私たちの間に割り込んできたので、信玄様と目を合わせて吹き出した。
佐助君は忍び姿ではなく着物姿で、龍輝があからさまにがっかりしている。
龍輝「なんで忍者じゃないの?」
佐助「無難に着物にしてみたんだ。大丈夫、いざとなったら早着替えで忍者になれる」
龍輝「わぁ、楽しみ」
結鈴と龍輝は甚平姿だ。
何が起きるかわからないので、動きやすさを考慮した。
戦国時代に行けば浮いてしまうだろうけど、現代の服よりはマシだろう。
「荷物全部持ちましたか?鍵をかけますね」
龍輝「みんな荷物いっぱいだね」
結鈴「ママ、大丈夫?リュック背負って龍輝を抱っこするんでしょ?」
「大丈夫、そこは加減してあるから」
1人だった頃は結鈴をおんぶして、ぐずった龍輝を抱き上げ、スーパーで買い物していた時もあった。
それに比べればリュックの重さは大したことない。