第50章 絶対絶命
タイムスリップの時間が近づいたので、私を含めた大人は現代の服を脱ぎ、着物に着替えた。
夜は更け、23時くらいだ。
着物に袖を通し足袋を履くと、趾間にあたる感覚がくすぐったかった。
皆も久しぶりに着物姿になり、ずっと現代の服だったせいか、とても新鮮に映った。
龍輝「わぁ、パパ達かっこいいね!おさむらいさんだねぇ」
結鈴「パパ達は本当に『昔の人』なんだね。刀、初めてみた!」
夜中に起こされて寝ぼけていた子供達も目が覚めたようだ。
興奮気味に謙信様達の間をクルクル駆け回る。
「結鈴、髪を結んであげるからおいで」
結鈴「わぁ、今日はゴムじゃなく紐なんだね。この紐綺麗、結鈴にくれるの?」
「駄目。それはママのだから貸すだけだよ。どの紐がいい?」
戦国時代で使っていた髪を結う紐を何本か出して結鈴に見せた。
結鈴「ママのケチー。結鈴はね、これにする!」
「…これね」
結鈴が選んだ織紐を手に取り、手近な所に置く。
この美しい紐を贈ってもらった時の……戸惑いと嬉しさを思い出し、頬が緩んだ。
サイドの髪を編みこみんだハーフアップにしてあげた。
細く真っ直ぐな髪は紐だけだとスルリと逃げてしまうので、細いゴムでまとめ、その上から織紐を結んであげた。
「結鈴の髪はサラサラだね。はい、完成。パパ達のところに行ってもいいよ」
結鈴が駆けていくと、信玄様が気付き、褒めた。
信玄「結鈴、可愛くなったな。もっと見せてくれ」
結鈴「うふふー」
謙信「……」
謙信様が信玄様を胡散臭そうな目で見ている。