第47章 現代を楽しもう! ❀デート編❀
「去年の夏に謙信様がこちらに来て下さったので、去年、今年と、秋は謙信様の色に染まりました。嬉しいです。
離れていた頃はこの歌の通り、冬は謙信様が恋しくて涙し、春になると謙信様と祝言をあげるはずだったのにと桜の花びらに想いをのせて泣いていました」
謙信「……」
この歌は遠距離恋愛の恋人を歌った、切ない曲だ。
でも続きがある。切ないままでこの二人は終わらない。
「夏の美しい夜に、月を眺めながら謙信様を想ったら…タイムスリップして来てくれました。
秋は謙信様と想いを重ねあい、いっぱい愛され…あなた色に染められてしまいました。
純白の冬は結婚式をあげてもらい、幸せすぎて…涙をこぼしました。
春は……ふふ、桜の花の下で色々ありましたね」
お花見をしに皆で出かけた時を思い出し、笑いがこみあげてくる。
広い背中に回した手を上下に動かして撫でる。
(一緒にいられて幸せだな)
「思えば私達はこの歌の通りになりました」
謙信「その歌の最後で二人はどうなるのだ?」
「聞きたいですか?」
謙信「良くない最後なのか?」
「いいえ、さっきも言った通り、私達と同じです。
季節がひと巡りした後、彼が『君しかいない。ずっと一緒に居よう』って迎えに来てくれるんです」
謙信「そうか……。
舞はいつも沈みそうになる俺をすくい上げてくれるな。
俺もお前とともに美しい秋を迎えられて良かったと思う」
「?」
(まるで秋を迎えられないと思っていたみたいな……)
理由はわからないけど言葉には重みがあり、謙信様の表情がやっと柔らかくなった。
結婚指輪に静かに視線を落とす。
謙信様は死にそうなくらい弱っていたのに私を追いかけてきてくれて、共に歩もうと言ってくれた。
(幸せだな。なんだかまた涙が出そう)
「幸せ過ぎて涙がでてきました」
グスッと鼻をすすると謙信様が指で涙の雫を拭ってくれた。
謙信「これからはお前が泣く時は幸せの涙であって欲しい。
幸せとは際限ないものだな。これ以上はないだろうと思うのに、次々と押し寄せてくる。
舞、俺はお前と出会って幸せ者だ」
左手をとられ婚約指輪をはめられた。