第47章 現代を楽しもう! ❀デート編❀
――――
――
お店を出たのはまだ3時頃だったけど、受けたショックでクタクタに疲れてしまった。
謙信様は繁華街を抜け、川沿いにある遊歩道まで歩いた。
茫然とした私は手を引かれるままついてきて、ベンチに座らされてやっと我に返った。
「謙信様、あの、さっきのって…」
思い出すのが怖いような、でも気になって仕方がなかったので聞いてみた。
謙信様はおもむろにブランドのロゴがついた指輪ケースを開けた。
謙信「驚かせてすまなかった。順番が違うが受け取ってくれるか?
式を執り行い、舞は俺の妻になったが、求婚の申し出の時に俺はお前に何も贈っていない。
この時代で『結納』と呼ばれるような儀も行わなかった」
謙信様は自分を責めているような、苦しそうな顔をしている。
「そんなこと気にしなくても良かったのに。第一家族も居ないのに結納なんて…」
謙信「気にする。舞は俺が愛する唯一の女だ。
本来ならば櫛を贈り、着物を贈り、家具や調度を揃えさせる。
女はひとつひとつ新しい物が増えていく度に妻になる幸せを感ずるものだ。
俺達にはそれができなかった。この指輪ひとつでどうこうなるものではないが、俺の求婚の証として受け取ってくれないか」
真剣な謙信様の顔と、太陽の光をキラキラとはね返す指輪とを交互に見る。
(こ、こんな綺麗な指輪……)
卒倒しそうだ。
正直な気持ちを言えば『こんな高価なもの受け取れません!』だけど、謙信様の気持ちを考えると受け取るしか選択肢はない。