第47章 現代を楽しもう! ❀デート編❀
店員「ご希望通り、ブレンドした精油の種類、割合などレシピにしておきました」
「ありがとうございます」
信長様の元に幾種もの精油が献上されていたのは知っている。
このレシピさえあれば、自分で作れるかもしれない。
店員「もう一つのアロマオイルがこちらです」
差し出された入れ物は私のものより一回り小さい。
お試しで作ってもらったものだ。
「謙信様」
照れて?ソリッドパヒュームのコーナーに足を向けていた謙信様に声をかけた。
謙信「呼んだか?」
女性しかいない店内で謙信様が過分な注目を集め始めていた。
ちょっと気が気でない。
「こちらの香りを嗅いでみて、どうですか?」
試香紙を差し出すと謙信様は首を傾げた。
謙信「この香りは舞には合わない」
「ふふ、正解です。これは私のものではありませんから」
謙信様をイメージして洗練されたクリアな香りを作ってもらった。
涼し気な雰囲気に合うよう清涼感を前面に、でも気品ある大人の落ち着いた香りも足してもらった。
謙信「もしやこれは俺のものか?」
「ええ、謙信様が着物に焚き染めていた香は複雑で、私も色々とお店を巡ってみましたが再現できませんでした。
だから私のイメージをお店の人に伝え、作ってもらいました。どうですか??」
ここ一年、謙信様は香りを纏うことはしなかった。
それでも本人が持つ特有の香りが私は好きだったのだけど…。
「謙信様はそのままでも良い匂いなんですけどね。
越後に行ったら一緒に過ごす時間も減ると思うんです。だから離れている時、私が選んだ香りを身に纏ってくれると一緒に居られる気がしたんです。
ただの自己満足なんですけど、もしその香りが嫌でなければ受け取ってもらえませんか?」
(自分が選んだ香りを纏って欲しいだなんて、ちょっと積極的すぎたかな)
謙信様の返事がちょっと怖い。
香りを気に入ってくれたかわからないし、焚き染めていた香の方が好きだと言われるかもしれないから…。