第47章 現代を楽しもう! ❀デート編❀
――――
――
レストランを出た足で、依頼しておいたアロマオイルを取りにきた。
自動ドアが開くと店内から精油の香りがした。
(現代でする、最後の買い物かな)
謙信様の腕に手を添え、中に入った。
――――
試香紙に一滴落としたアロマオイルを『嗅いでみてください』と謙信様に差し出した。
謙信「この香りは…」
謙信様は鼻に近づける前に気が付いたようだ。
「ふふ、懐かしいですよね。あの時身につけていた香りを再現してもらったんです」
妊娠中は避けてくださいと言われ、信長様から頂いた香油の小瓶はずっと病院の棚に置いたままだった。
出産後も、子供達が小さいうちは強い香りは避けた方が良いかと封印したままだった。
(そうこうしているうちに香油が劣化して、使えなくなっちゃったんだよね)
思い出の香りを駄目にしてしまったと気づいた時には、戦国時代の思い出が欠けてしまった気がして、凄く悲しかった。
「このお店は精油をブレンドして好みの香りを作ってくれるんです。
劣化してしまった香油の匂いを頼りに作ってもらいました」
謙信様が片手で口元を覆った。
謙信「その香りは駄目だ」
(え!?駄目?臭いってこと?)
でも謙信様の表情から見て取れるのは不快というよりも、どちらかというと…
(目が泳いで、顔がちょっと赤い?)
「えっと、使わない方が良いってことですか?」
謙信「……そのような意味ではないっ。察しろ」
「え、え?」
(何をどう察すれば良いんだろう?)
この香りは戦国時代に居る時につけていたから…
「えっと、思い出したとか?一緒に過ごした頃のこととか…」
謙信様の眉間の皺がより悩ましげに深くなった。
怒っているというよりも、なんだか色気を感じてしまうのは惚れた弱みのせい…?