第47章 現代を楽しもう! ❀デート編❀
映画を見終え、そのままモールでランチも良かったけど、良い機会だからと郊外にあるフランス料理のお店にコース料理を予約しておいた。
謙信「これは……」
ズラリ並んだカトラリーを目にして謙信様が戸惑いの表情を浮かべた。
「気にせず、どうぞ座ってください」
私は運転手だから飲まなかったけれど、謙信様には料理に合ったワインをお店の人にセレクトしてもらった。
――――
食事をしながら例のお寺の話になり、毘沙門天を埋めたのは牧さんだと知った。
牧さんは謙信様と私を取り次ぐ役目を果たせなかったばかりか、正門から旅立った私に気付かず、行かせてしまったことに相当責任を感じていたらしい。
謙信「『謙信様と舞様のために、俺にできることを命じてください』。
そう言われてな。義元とは別で単独で動いてもらったのだ」
「そうなんですね。あとで牧さんにお礼を言わなきゃいけませんね。
けど、まさか私が寝込んでいた時、天井裏や床下にまで見張りの方が居たなんて知りませんでした」
安土城で軒猿の気配を全く感じなかった理由を今更知った。
謙信「帰ったら顔を見せてやれ。牧はいつもお前のことを案じていた。
舞が帰ってくると信じ、越後に来た時のためにと女の軒猿を育てると言っていた」
驚いてパンをちぎる手が止まった。
「え、牧さんがそんなことを?」
一度目は会話さえ成り立たず、二度目はちょっと恥ずかしい思いをした記憶が蘇る。
謙信様は軽く頷いた。
謙信「あれは一度(ひとたび)認めれば誠心誠意動く男だ。
あの宿で何かあったか?」
「…いえ。文を渡してもらっただけで特には何も。
初めて会った時、投げ飛ばしてしまったからでしょうか」