第47章 現代を楽しもう! ❀デート編❀
謙信「………ふっ、なるほど」
何食わぬ顔でそれを聞いていた謙信様が私の顔を覗き込んだ。
小さくひそめられた声は愉快と言わんばかりだ。
謙信「真っ暗になると一目を気にせず手を握れるということか」
間近に迫る綺麗な顔にごくりと息をのんだ。
(いつでもかっこいいから困っちゃうな)
「お嫌ですか?」
謙信「何を言う。大歓迎だ」
そっと手を取られ、指を絡められた。
「と、時々離してくださいね。汗ばんでしまうと思うので」
照れくさくて可愛くないことを言ってしまったけど、
謙信「ずっと握っていろとは愛らしいことを言う」
謙信様はてんで私の意見を聞かず、自動変換してしまった。
けれどその自動変換された言葉の方が本心だったりもするのだけど…。
――――
胸をざわつかせながら開演時間を迎え、始まってしまえば久しぶりの映画の世界にあっという間に引き込まれた。
スパイ演じる主人公が秘密めいた美女と織りなす、アクション映画だ。
スリルと陰謀、刹那の愛、それらが目まぐるしい展開で進んでいった。
途中、車同士がぶつかった衝撃音に身体がピクリと反応してしまうと、謙信様の手が安心しろとでも言うように力がこもった。
そうしているうちに今度は目の前に座っている二人が身体を寄せ合わせた。女性の頭は男性の肩に乗っている。
(前の二人、ラブラブだな…)
スクリーンを見ているけど視界に入るのでなんとなく気になってしまう。
謙信「あれも定番なのか?」
不意に耳元で囁かれ、飛び上がるほどびっくりした。
謙信様は気配をさせずに動くのが上手だ。
(違う違う!)
定番と言えば定番だけど、あそこまでするのは珍しい。
勢いよく首を振ると謙信様がおかしそうに口元を緩めた。