第46章 現代を楽しもう! ❀準備編❀
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謙信様達も語学教室を辞め、剣道やフェンシング関係でお世話になった人達に『引っ越すことになった』と挨拶に回った。
子供達も出発ギリギリの日付で退園することにし、佐助君も大学院の人達にお別れをしてきたみたいだった。
龍輝も結鈴も周りの雰囲気を感じ取り、最近少しソワソワしている。
龍輝「先生とお友達とお別れ、ちょっと寂しいな」
「そうだね。だから保育園に行っている間は思い切り皆と遊んでおいで」
龍輝「うん」
結鈴「結鈴も寂しいけど、500年前に行けるの楽しみ」
「結鈴はやっぱり『あの人』に会ってみたいの?」
ここ1年くらい、結鈴は特定の武将人形を可愛がるようになった。
なんとなく気になるらしく、時折『会ってみたいなぁ』と言っている。
(謙信様は気づいていないみたいだけど、もし知ったら全力で止めそう)
結鈴に甘い謙信様がどんな顔をするのか見てみたいので、わざと黙っている。
(私的には凄く素敵な人だと思うけど、ひと癖もふた癖もあるから…)
子供の結鈴には刺激が強すぎるかもしれない。
結鈴「うん!」
会えるのが楽しみと満面の笑みを浮かべている結鈴が、少し心配だ。
「もしかしたら結鈴が思っているような人じゃなかったらどうするの?」
結鈴「えー、遠くから見るだけにする。
そういうのを『めのほよう』って言うんでしょ!?」
「また変な言葉を覚えてきてる……」
保育園でお友達とどんな話をしているのか凄く気になる。
「結鈴が会いたい人は結婚していて、子供もいるよ?」
結鈴「いーよー。ただ会ってみたいだけだもん」
「恋してるわけじゃないんだね、それなら安心だ」
会ったことがない相手に初恋でもしてるのかと思ったけど、そうじゃないらしい。
(子供が居るって言ってたけど、人に預けたって言ってたし…あんまりイメージ湧かないんだよね)
あの人と子供というイメージが結びつかない。
こうして考えてみれば安土の皆の一面しか見ていなかったと気づく。
一緒に過ごしていたからなんとなく人となりは理解していたつもりだったけど、安土城の外で、どんなふうに過ごし、どんな人と過ごしていたのか知らない。
(私も…会いたいな)
脳裏にまざまざと浮かんだ姿に、胸がふんわりと温かくなった。