第45章 現代を楽しもう! ❀姫の心配❀
一緒に行動することが多い信玄様なら、謙信様の電話の相手のことを知っているかもしれない。
聞いてみようと口を開きかけた時、背後から低い声が響いてドキリとした。
謙信「誰が鈍いだと?甘味の食いすぎで頭がおかしくなったか?」
「わわわ!謙信様、信玄様に失礼ですよ!」
謙信「失礼はどっちだ。俺が居ぬ間に陰口をたたき、舞を誘導しようとしていただろう?」
「誘導!?ただ相談に…」
謙信「相談なら俺にしろ」
なんとなく『電話の相手は誰ですか』と聞けずに『はい』とだけ答えた。
謙信様が他の女の人と会っている。そんな気がしたけど追求できなかった。
気になるけど、聞けない。
『浮気』という文字が頭に浮かんで消えないのに。
謙信様は確かに私を愛してくれている。
(でも待って…)
戦国時代の武将は奥さんがたくさん居るのが普通。
だったら器用に愛情を振り分けることができるのかもしれない。
私のことを愛してくれているけど、その他の人も同様に愛せたりするのかも…。
『浮気』という観念がないのかもしれない。
(いや、でも謙信様は私だけって言ってくださっていたし…)
グルグルと考えが回る。
信玄様には聞きづらくなってしまったし、謙信様には怖くて聞けない。
(少し心配だけど……謙信様のこと、信じよう。
なんだか最近落ち着かないことばっかりだな)
謙信「………」
後にこの電話の相手の正体はわかるのだけど、私が謙信様の浮気を心配していたのと同時に、謙信様も私の浮気を疑っていたことなど、この時の私は思いもしなかった。