第45章 現代を楽しもう! ❀姫の心配❀
(気のせいだよね)
「あ、はい。保育園のお迎えを頼んでしまって申し訳ありませんでした。
明日からしばらく定時より30分ほど帰りが遅くなると思います」
謙信「……それは仕事で、か?」
謙信様が途端に不審げな顔をして、私の様子を伺うように見てくる。
信長様の着物を縫うためなんて言ったら絶対拗ねるだろうし、完成した着物をどうにかされそうでちょっと怖い。
お礼以上の気持ちはないと言っても、謙信様はいい気分はしないだろう。
謙信様に余計な心労を与えたくない。
「は、はい。退職前に仕上げてしまいたいモノがあって」
謙信様に嘘は通じないから、言える範囲の真実を伝える。
心の奥底にあるやましい部分がバレてしまわないか内心ドキドキした。
謙信「そうか、なら仕方がない。それで…」
謙信様のスマホが振動し、着信を知らせた。
「?」
謙信「舞、すまない。また後でな」
謙信様が断りを入れ、着信に応じる。
?「………ません……ますか?」
(っ、さっきと同じ声の女の人だ……)
いたたまれなくなって急いでリビングへのドアを開く。
龍輝「おかえり、ママ!」
結鈴「あのねー、保育園の先生がね、パパを見て真っ赤になってたよ」
龍輝「どうしたんだろうね」
無邪気に走り寄ってくる二人にホッとした。
「そうなの?きっとパパが格好良いからじゃない?」
普段通りを装って対応していると、信玄様がすっと近づいてきた。
信玄「おかえり、姫。綺麗な顔が少し翳っているようだがどうした?」
(う、するどい)
「そうですか?残業したからちょっと疲れてしまって…そのせいかもしれません」
信玄「そうか?まあ、何かあったら相談においで。
謙信は敏いようで鈍いところがあるからな」
(さ、流石だな、信玄様)
私の様子を見ただけで謙信様との間に何かあったんだと気づいたみたいだ。