第45章 現代を楽しもう! ❀姫の心配❀
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「少し遅くなっちゃった」
信長様の着物を仕立てていたら、30分の居残りが1時間になってしまった。
謙信様に連絡して保育園のお迎えを頼んだ。
「やっぱり着物を仕立てるのは楽しいな」
時間を過ぎてしまったのは不注意だったから明日からは気をつけなきゃ…
そう考えながら車を走らせ自宅に到着した。
「ただいま帰りま……ぁ」
玄関を開けるとすぐに、謙信様がスマホを耳にあてて立っていた。
(あ、電話かな……)
謙信様が私の姿を確認し、視線で「おかえり」と言ってくれる。
邪魔にならないようにと静かに靴を脱いだ。
?「…、……、………」
(電話の相手、女の人?)
謙信様の周りで女性と言えば絵美くらいしか知らない。
(フェンシング関係のスタッフは男性だけだったし、誰だろう)
謙信「ではまた後日」
簡潔に返事をし、謙信様は通話を切った。
「あ、デッサンが…」
バッグに入らず脇に挟んでいたスケッチブックがばさりと落ちた。
信長様の着物のデザインを描いたページが開き、少し見えてしまった。
(まずい!)
慌てて閉じた。
謙信「……」
「……」
(謙信様の電話……『また』とか『後日』ってなんだろう)
謙信「おかえり舞、今日は遅かったな」
電話のことなどなかったように、いつも通りの出迎えだ。
特段変わった様子は見受けられない。