• テキストサイズ

☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第3章 看病一日目 可愛いは褒め言葉


土間を見ると確かに食材らしきものはない。
幾つかの鍋や菜箸、食器類が見えるだけ。

まるで一人暮らしの独身男性のような(それよりも酷い)台所にポカンとしてしまった。


謙信「ここは仮住まいだ。食事は外で済ませ、いつでも引き払えるようにしている」

「そうなんですね。では買い物に行ってきます」


気を取り直して手荷物の中から鉛筆とメモ帳を手に取る。
あるのは薪や飲み水だけで、料理をするには一から揃えなくてはいけないことがわかった。

食器類は明日城から借りてくるとしても、結構な物入りになりそうだ。

上り口に腰かけて必要な物をメモし終えると、城下へ買い物に行ってくると伝える。


謙信「気を付けて行け」

「平気です。買うものがたくさんあるので少し時間がかかると思いますが、なるべく早く戻ってきますね」

謙信「ちょっと待て」


謙信様が手招きしたので傍に寄って膝をついた。


「なんでしょうか?」

謙信「その紙を見せろ」


私が持っていたメモをとりあげると二色の瞳が左から右へと動いた。
途端に眉間に皺がより、難しそうな顔をした。


謙信「おかしな書き方をする。お前の国ではこれが普通なのか?」

「え?何のことですか?」


首をひねったものの、すぐに謙信様の言わんとするところを理解した。


「すぐ気付かなくてすみません。横書きのことですね?
 私の国では普通です。縦書きもしますけど、私は横書きを使うことが多いです」


人それぞれですけどね、と笑って見せる。

謙信様はそれ以上言わず、私の手から鉛筆を取るとメモ帳にサラサラと何か書いている。
文字を書き始めた時、謙信が鉛筆の先端を興味深く見たのがわかった。


謙信「これを持っていけ」


鉛筆については特に追及されず、メモと一緒にお金が入っているだろう巾着を渡された。


「謙信様からお金は受け取れません。私の手持ちで足ります。
 看病させてくださいって勝手を言ったのは私なんですから」

謙信「女に金を使わせる気は毛頭ない。黙って持っていけ」


謙信様の目が細められ、何やら圧まで感じられる。

/ 1735ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp