第43章 現代を楽しもう! ❀謙信様の杞憂❀
(第三者目線)
「それであっちに帰る時に持っていくものなんだけどさ…」
佐助「そうだね、念のために数日分の食料と、薬を用意して…」
「……でいいかな」
佐助「うん、あとでお互いリストを作って擦り合わせしよう」
舞と佐助が戦国時代に帰る際の打ち合わせをしている時だった。
玄関の扉が開閉する音が聞こえた。
佐助「あの音は謙信様かな」
「うん、なんだか少し慌ててる?」
基本的にあまり音を立てない謙信が今日は慌ただしい音を立てて帰ってきた。
玄関からリビングに通じるドアが開き、リュックを片方の肩に背負い、眼鏡姿の謙信が姿を現した。
アシンメトリーの褪せた金髪が乱れ、少し肩が上下している。
いつもリュックに入れて持ち帰ってくる図書館の本を手に持っていて、急いで帰ってきたのが伺えた。
佐助「謙信様、どうかしたんですか?」
部下の佐助は謙信の明らかな異変に気付いて心配し、舞はというと、
「謙信様、おかえりなさい。今日は少し早いですね」
なんていう、呑気な出迎えをした。
二人同時に声をかけると謙信はリュックと本をソファに置き、二人の元に歩み寄った。
返事をしない謙信に舞は首を傾げた。
「謙信様、どうしたんですか?って、きゃっ!?な、何するんですかっ」
佐助「!?」
二人が驚くのも無理はなかった。
謙信はおもむろに舞が着ていたカットソーを上に捲り、履いていたスカートをずりさげようとした。
「ちょっと、謙信様っ!?」
押さえても無駄だとわかっている舞は後ずさることでその手を逃れた。
謙信は苛立たしげに一歩近づき、またしても舞の服に手をかけようとした。
だがそれは佐助によって妨害される。
佐助「謙信様、それは女性に対してマナー違反です。
人前でいきなり女性の服に手をかけるなんて駄目です、絶対」
二色の瞳がジロリと佐助を睨んだ。
謙信「それどころではない。舞の身体を調べなければ気が済まん」
「なんでですか?」
目を丸くした妻に対し、謙信は下心など皆無といった深刻な顔をしている。