第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
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「……うん、美味しい。これも…、でも……これだなぁ」
自分で作ったカプレーゼや切ったサラミ、チーズをつつきながらじっくり飲んでいると……
謙信「舞、大丈夫か?」
声をかけられてふと時計を見ると、かれこれ1時間が経っていた。
もはや賭けのことを忘れ、一人で本格的に飲んでしまっていた。
「謙信様。ウイスキーの味はいかがですか?」
謙信「日本酒ともワインとも違う、味わい深い飲み物だな。熟成させるときに使われた木製の樽の香りが好ましい。
お前はどうだ?気に入ったものはあったか?」
酔って熱をもった頬を謙信様が指の背で撫でた。
(謙信様の指、気持ちいいなぁ)
酔ってフワフワした頭で、ひとつのボトルを選んだ。
「これが一番好きです」
何度もおかわりしたからそのボトルだけ中身が減っている。
謙信様はボトルを見て至極嬉しそうな顔をすると、ぎゅっと抱きしめてくれた。
謙信「それは俺が選んだものだ」
「ふふ、流石ですね」
(ああ、なんだかすごく幸せ)
ワインの嗜好があった。ただそれだけことが凄く嬉しい。
酔いも手伝って良い気分だ。
ニコニコ笑っていると謙信様の腕に力がこもった。
誰にも聞こえないよう、耳にそっと囁かれた。
謙信「そのように愛らしく笑っていると、お前を滅茶苦茶に抱きたくなる」
「っ!!?」
やたらと情熱的な言葉にびっくりする。
目が合うと二色の瞳が少しトロリと溶けていた。
(よ、酔ってる、絶対!)
「そんな…じゃあ、ワインを当ててもはずしても結局私は食べられちゃうんじゃ…」
謙信「さあ、知らないな」
小さい声で抗議しても謙信様はどこふく風。
「ところで謙信様、酔ってますよね?」
謙信「俺は滅多に酒に酔わない」
「よ、酔ってます!」
チラリと向こうのテーブルを見るとウイスキーの空瓶が数本、念のためにと用意しておいた日本酒の一升瓶も、全部空いていた。
(だ、誰があんなに飲んだの!?)
嫌な予感しかしない。