第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
信玄「酔ってるよなー?」
佐助「ええ、あれは完全に」
「お二人とも、なんとかしてください」
信玄様は喉を震わせて笑うだけで、ロックのウイスキーを傾けている。
傾けた拍子にグラスの氷がカランと涼しげな音を立てた。
(信玄様、ウイスキーが似合うなんてやっぱり大人……じゃない!
信玄様は助けてくれそうにない)
チラリと佐助君を見る。
佐助「それはちょっと難しい。茶々をいれたら本気で謙信様を怒らせそうだ。
悪いけど舞さん、謙信様をお願いするよ」
「え…」
謙信「え、とはなんだ。大丈夫だ、俺は酔っていない」
するりと腰に回ってきた手をぺしっと返り討ちにするも、今度は髪をクルクルともてあそばれる。
普段よりも距離が近い。
今まで何回も感じたことがあったけど、謙信様は龍というよりも、
………大きい猫みたいだ
「ふふっ、酔ってますよ、謙信様」
謙信「酔ってなどいない」
何度も言われて面白くないのか、切れ長の瞳が気まずそうに逸らされた。
鍛錬をしている時の鋭い目つきや華麗な身のこなし、苛烈な一撃を見ているせいか、隣に座る猫のような人がとても同一人物とは思えない。
(人前では凛としてるのに私の前では可愛いくなるなんて、まいっちゃうなぁ)
そう観念した夜は、
『俺のワインを当てた褒美だ』と、酔っているとは思えないほどしつこく、深く、めいっぱい愛されることとなった。