第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
謙信「眠っている西洋の姫は王子に口づけされると何故か目を覚ますのだ」
信玄が病室で目を覚ました時『王子様は目覚めた』と言っていた。
その時は意味がわからなかったが、結鈴に付き合って本を読んでいるうちにわかってしまった。
あの病室には信玄と舞しか居なかった。
信玄は寝たきりで、目を覚ますきっかけになったのはおそらく口づけだ。
なぜ舞自ら信玄に口づけたのか、未だに聞けずにいる。
舞に二心があるとは思わない。
ちょっとのことでは揺れないくらいには一緒に過ごしてきた。
しかし、とは思う。
全て俺のものだと思っているのに、あの柔らかな唇が信玄に触れたかと思うと隣に座る男が憎い。
佐助がインフルエンザで倒れた時、薬を飲ませるために舞は口移しをしたが、あれは致し方なかったと不問にしている。
家臣達ならば凍り付くだろう視線をまともに受けても信玄は動じない。
それどころか悪びれもせず、
信玄「陣中見舞いだ」
などと言い放った。
謙信「……は?」
信玄「手術室に入る前にな、手術が成功するよう、姫に『祝福をくれ』って言ったんだ」
眠っていた龍が目を開き、己の中でユラリと身体を起こしたのを感じた。
信玄「おっと、落ち着け。姫は一途だからな、断られたんだ。
俺が眠ったまま起きなかったせいで姫は責任を感じたんだろうな。
『もしあの時祝福の口づけをしていたら』ってな。
いつまでも起きない俺に一生懸命話しかけてくれて……健気な女だな、姫は」
謙信「要はお前が余計な要求をしたから舞が無駄に責任を感じただけなのだろう。信玄、貴様……」
刀がないのが口惜しい。