第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
佐助「こちらの白ワインは渋みがないですよ。ロゼと言って飲みやすい甘口ワインもあります」
佐助に注がれた白わいんを口に含むと、先程の赤わいんとは全く違う味がした。
(飲みやすい。だが飲みにくい酒程、味がわかれば楽しめるはずだ)
謙信「まずは赤ワインを攻略する。白ワインは後だ」
佐助「攻略って…飲み過ぎないでくださいね」
佐助が心配顔で、先程とは違うボトルを手にした。
信玄「俺は白とロゼを試飲してるよ。姫にはそっちのほうが合いそうだ」
聞き捨てならない。
謙信「なぜあいつの好みそうなものを探ろうとしている?」
信玄「んー?買って帰りたいから美味しいのを選んでくれって昨日言われたからな。
家に帰ったら姫と一緒に楽しめるワインを選んでやらなきゃな」
謙信「……俺が選ぶ」
信玄「じゃあ、お前が赤ワイン、俺が白ワインを選ぶのはどうだ?
姫には誰がどちらを選んだかを秘密にして、どちらが好みか聞いてみようじゃないか」
佐助「では俺はロゼ担当で参加します」
信玄が愉快そうに笑った。
信玄「面白い。各自それぞれ姫に合うワインを1本選ぶってことにしよう。勝負だ。
勝者には…そうだな。次のドライブで助手席に座る権利なんてどうだ?」
(助手席は俺のものだ)
舞の運転している姿を一番間近で堪能できる場所。
時折後ろに気付かれぬよう触れることもできるし、『旅のおとも』を手ずから食べさせることもできる。
恥ずかしそうに開いた口に菓子を入れる瞬間が何よりも楽しいというのに。
謙信「ならん。助手席は俺のものだ」
信玄「へー?酒好きで、舞の夫でもあるお前が舞台に上がってこないなんて、まさか負けるつもりか?」
一番難しそうな赤ワインを割り振っておいて、憎たらしい虎だ。
だが勝負を持ち掛けられ不戦敗などもってのほか。
謙信「誰が断った?勝負に勝つのを確信しているから『助手席は俺のもの』と言ったのだ」
信玄の眉が楽しそうに上がった。
佐助「さすが謙信様。初めて飲んだお酒で勝利を確信するなんて。
では制限時間は今から30分ということで。くれぐれも試飲ですからね。飲み過ぎないようにしてください」