第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
(謙信目線)
この時代の甲斐国に来て2日目。
舞がワイナリーという場所に連れてきてくれた。
最近ではすっかり鳴りを潜めているが、俺の酒好きを気にして『日本酒ではないお酒も飲んでみては?』と言ってくれた。
謙信「これがワイン……」
佐助が数ある瓶の中から適当に取り出し、俺が持っているグラスに少量注いだ。
日本酒とは全く違う酒の色、香りに戸惑う。
見るのは初めてではない。
南蛮の者から献上されたことはあったが飲む気にならず、そのままお蔵入りにしていた。
佐助「はい、さっき見学してきた葡萄畑の葡萄で作られたお酒です
ちなみに試飲なので少しずつです。いろんなものを試して好みに合ったものを買うんです」
謙信「葡萄の種類、年、気候で味が変わるんだったな…」
それは日本酒でも変わりはないが、どのような違いが出るのか興が引かれた。
信玄「ワインは見て嗅いでから、最後に味わうんだったな」
信玄がワイングラスに入った赤紫の酒を見ている。
ワイナリーのガイドが、製作過程、飲み方、楽しみ方を懇切丁寧に説明してくれたおかげで、初めてワインを目にした時よりも抵抗がなくなった。
(人の生き血のようだと思ったが…)
こうして嗅いでみると果実味のある香りがして、鉄錆びた匂いがする生き血とは似て非なるものだ。
謙信「………渋い…が酸味もあるな」
表現しがたい複雑な味がして眉をひそめる。
うまいと一概に言えないのは飲み慣れていないからだろう。
葡萄の味を想像していたが、生で食べる時のような甘味はなかった。