第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
信玄「さあてな。考えてはいるんだ。国は取り戻したいが争いは起こしたくないと思っている」
「え?」
信玄「戦わず交渉で国を取り戻したい。この時代でそうあるように、国と国の争いを、まずは言葉で解決したいと思っている。
君が謙信の元に輿入れすると決まった時点で他の大名達とも話し合ったが、帰ったらもう一度話合おうと思ってる。
多少君の姫の立場と、謙信の力を借りるかもしれないがな」
茶色の瞳が澄んだ光をたたえている。
私を畳に押し倒してきた時の冷たく獰猛な雰囲気は、ない。
信玄「俺は姫に返しきれない恩がある。信長と戦い、対立すれば君は悲しむだろう?
おれは君を悲しませたくないんだ」
「信玄様……」
信玄「だから戦いを避けるためにどうすればよいか、ずっと考えている。
信長が甲斐の統治と引き換えにしてでも利があると判断するものは何かと」
「ありがとうございます、信玄様。
流れる血がなくなるなら私に出来ることならなんでもします。越後と安土が婚姻で繋がったら、信玄様とも繋がれたら良いです。
いっそ甲斐の国を信長様と共同統治したらいかがですか?」
信玄様が珍しく目を丸くしている。
「他人が治めている国を奪い奪われて争いが生じたのですから、信長様が治めている甲斐国を奪おうとするとまた争いが起きるでしょう?
こう……なんて言えば良いのかわかりませんが、入り込む隙間がないところに入ろうとするから大変なんです。
奪い返して完全統治というのがそれで、もともと治めていた信玄様達にしてみれば不満は大いにあると思いますが、目標をずらして『共同統治』にしたらどうでしょうか。
そして何かの折に『完全統治』に持って行く……なんて余計なことを言いましたね」
あの時代の国同士の在り方がなんたるかを知らない私に、まともな考えが出せるわけない。
と思ったのに、
信玄「やられたな。君って女は、政もできるのか?」
「え?またまたご冗談をっっと、わわっ!?」
信玄様が動いたと思ったら子供を抱き上げるようにわきの下に手を入れられ、持ち上げられた。