第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
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信玄「ここが500年後の甲斐国か」
国道におりる前に寄ったサービスエリアで信玄様が感慨深く辺りを見渡した。
謙信様が龍輝達とお手洗いに行ってしまったので、信玄様と一緒に景色を眺めた。
「富士山をこんなに間近で見たのは初めてです。自然豊かな場所ですね。
ここが信玄様が治めていた国…」
いつもより酸素濃度が濃い気がする。
思わず深呼吸したくなるほど気持ちがいい。
信玄「500年前だがな。それに信長にとられた」
富士山を静かに見ながら、信玄様が呟く。
戦国時代の甲斐国がどうだったかはわからないけど、今見えている山々の姿はそう変わりないはず。
この素晴らしい風景の中で信玄様は育ち、国の人達と力を合わせて治めていた。
「……」
国のために私に手をかけようとしたり、『俺を好いてくれば丸くおさまる』なんて言われて『ご自分の国ばかり』となじったことがあった。
でもこの雄大な景色を目の前にして少しだけ信玄様の気持ちがわかった。
この美しい国を取り戻したいと思った気持ちが。
「信玄様がなんとしても甲斐国を取り戻したいと思った気持ちが少しわかりました。
とても美しい場所ですね」
信玄「姫にそう言ってもらえると嬉しいな。
景色もだが、俺はここに暮らしていた民も大事だったんだ。
人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。そうやって皆で暮らしてきたんだ」
「帰ったら、信長様と争いますか?」
信玄様の視線が遠くから私へと向けられた。
『そうだ』と言われたら悲しい。でも、やめてくださいなんて言えない。
どちらが悪いのではなく信玄様と信長様の信念がぶつかり合っているのだから。