第42章 現代を楽しもう! ❀山梨編❀
今日のお菓子はこれを持ってきたとか、食べ過ぎるな、お茶をこぼしたなどなど。
バックミラーに賑やかに映っているものは、きっと今だけの風景。
チラリと助手席を見れば、謙信様が『疲れたか?』と心配してくれる。
「ふふ、まだ全然疲れていませんよ」
そう返しながらアクセルを踏んだ。
戦国時代に行ってしまえばこうして気軽な遠出もできない。
あちらでは気軽な旅行でさえ、夜盗や牢人達に狙われる。
謙信様の家族と知られれば刺客が現れるかもしれない。
謙信様達だって忙しいだろうし、旅行なんてそうそう行けるものじゃない。
今なら時間がとれるし車でどこへでも連れて行ける。
謙信様達も子供達も、私の手で連れて行ってあげられる。
(多分、現代にいるうちに遠出するのはこれが最後だ)
「さぁ、山梨へ向かいますよっ!」
胸に広がる色々な想いを閉じ込めて、ぎゅっとハンドルを握り締めた。