第41章 現代を楽しもう！　❀信玄の企み❀

―――――次の日


「はい、信玄様」

信玄「ありがとう、舞」


姫が仕モノトーンのクロスで包んだお弁当を渡してくれた。


謙信「舞、一応聞いておくが、それは何だ？」


やはりというか謙信に見咎められた。
蛇のように絡まってくる温度のない視線。

近くに居た龍輝と結鈴が驚きふり返って見る程、低い声。


（ははっ、久しぶりだな、こんな謙信は）


俺は愉快な気分になり、舞は身構えながら言った。


「謙信様がお弁当はいらないというので、たまには信玄様にって。
　毎日外食だと塩分とか気になりますし…」

謙信「…………信玄」


殺気を伴った視線を向けられたが知らぬふりをする。


信玄「ん？どうした？」

謙信「謀ったな？」

信玄「なんのことかわからないな」


謙信が歩み寄り、俺の弁当を乱暴に掴んだ。


「あっ！揺らさないでください！
　信玄様のためにたこさんウインナーに目をつけたんですから！！」

龍輝「えー、いいなー。ぼくも目がついたたこさんウインナー食べたい」

「え？あ、じゃあ明日ね、龍輝」


急な横やりに律義に返事を返す姿が微笑ましい。
だがその隣には負のオーラを放つ謙信が鬼神の如く、だ。


謙信「信玄の弁当にそのような小細工はいらん！
　第一、お前は騙されているぞ。こいつは舞の弁当が食べたいばかりに、さもお前を気遣うような話を俺にして……っ」

「そ、そんなに怒らないでください。それに信玄様はそんな方じゃないですよ」

謙信「信玄は『そんな方』だっ！こいつは策を練って俺からお前の弁当を取り上げたんだ！」

佐助「……謙信様、なんだか小学生の喧嘩みたいになってますよ。
　イメージが崩れて舞さんに嫌われてしまいます。一度落ち着いてください」

結鈴「そーそー。だってパパのお弁当はちゃんとここにあるよ」

謙信「なに？」



結鈴の手に、謙信の弁当があった。