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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第3章 看病一日目 可愛いは褒め言葉


俺の代わりだと流した涙と怒り……俺が当時、誰にも吐き出さなかったことを驚くほど克明に言い当てた。


(誰も俺の胸の内など理解できぬだろうと思っていた)


家臣達は今でも『殿のために正しいことをした』と思っているはず。

『私が居たら怒鳴ってやる』と言っていた本気の顔。

胸がスッとしたのは間違いないが………


謙信「はっ……小娘の戯言だ」


動かされるな。俺の心は俺のものだ。
他人がどう考えようが俺が伊勢を殺したことに変わりはない。


心落ち着けてから改めて思う。
いつも腑抜けた顔をしているが舞の内面は思っていたより強い。


(信長に気に入られているだけある。あのような女は会ったことがない)


『寵姫』の意味を知らず、学がないのかと思ったが、今までの言動を思い起こすとそうでもない。


(おかしな女だ)


息を吐き何気なく袂に放り込んだお守りを取り出して…思考が止まった。


(あの女、なんのつもりでこれを寄こした?間違えただけか、それとも…)


ぐっと眉間に力が加わった。深く考えるのをやめお守りは袂に戻した。


謙信「……」


刀を抱き込み、片膝を立ててそこに顎を乗せた。ぼんやりと眺める先には佐助が寝ている。


(舞が口移しで薬を飲ませた時、俺は何故動揺した?)


薬を飲ませろと促したのは自分だったというのに。


(橋の下であの女の耳を塞いだのは…何故だ)


味方の声に惑わされる舞の姿が不憫だったから、ではない。
他の男の声に惑わされているのが気に食わなかったからだ。


(何故だ……)


明確な答えが出ぬまま夜明けを迎えた。



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