第40章 現代を楽しもう! ❀佐助君の憂い❀
佐助「信玄様。俺達が留守にしている間に打ち解けてくれたのは歓迎すべきことですが…」
佐助が気まずそうに眼鏡をずり上げた。
会話だけ聞いていればなんてことない普通の会話だ。
しかし台拭きを差し出す舞も、剣道着を受け取る謙信も目が合う度に視線を絡ませ、幸せそうに笑んでいる。
家族団らんの際中にも舞と謙信は見つめ合っている時間が多い。
佐助「謙信様があんなに笑うなんて、そのうち槍が降って、天井を突き破ってくるんじゃないでしょうか」
信玄「ははっ、まぁ、新婚夫婦のところに居候してるようなもんだ。こんなもんだろう。
死にかけていた上司が笑ってんだ。部下は黙って祝福してやれ」
佐助「その気持ちはあるんですが…」
佐助は舞が作ってくれたピーマンの肉詰めを口にする。
佐助「ピーマンの苦みと下味がついたお肉がマッチしていて美味しい……はずなのに何故か甘く感じるんです。
お味噌汁も漬物も味覚は塩味を感じているのに甘く感じるのは俺の舌がおかしくなったのでしょうか。
それになんだかいつもこう、お腹がいっぱいというか、胸がいっぱいというか…」
佐助が首を傾げると信玄がふき出した。
信玄「空気が砂糖みたいに甘いもんなー。
桃色の空気にあてられて何食べても甘く感じて胸やけをおこしてんじゃないのか?」
佐助「っ、なるほど。原因がわかって良かったです。
味覚と胃の心配を本気で心配していました」
信玄と佐助がそんな話をしているとは露とも知らず、舞と謙信は目が合っては微笑み、一緒に居られる幸せを噛み締めていた。