第37章 現代を楽しもう! ❀北の旅編❀
外で写真を撮るというので、可愛い真っ白なボレロを着せられて外に出た。
「さ、さむい」
北海道の2月は肺まで凍るような寒さで、おかげで混乱していた頭がすっきりした。
高台にある写真スポットに立たされると辺りは美しい銀白の世界だった。
山々に、大地に、降り積もった雪が日差しをうけてキラキラと輝いている。
空を見上げれば、青く高く澄んだ空が広がっている。
幻想的な風景は、永遠の幸せと平和があるとされる神聖な
……神々の世界のようだった。
「綺麗……………」
言葉と一緒に吐息が白い靄となる。
日本にこんな綺麗な場所があるなんて知らなかった。
息をのんで景色を見ていると肩に手が回った。
謙信「ああ、綺麗だな」
謙信様の視線は景色じゃなく、まっすぐ私に向けられている。
「もったいないですよ。私なんかじゃなく景色を見てください!」
謙信「お前には悪いが、景色なら昨日の下見で充分堪能した。
今日はこの景色が飾ってくれる舞を見ていたい」
(下見!?いつの間にっ)
こんな美しい風景を昨日も見ただなんて…ちょっと羨ましい。
「も、もう!雰囲気に浸っていたのに、謙信様ったら!」
カメラマン「はい、ではこちらを向いてくださーい!」
謙信「ほら、愛らしく笑え」
「む!謙信様だってちゃんと笑ってくださいよ!」
謙信「『ちゃんと笑え』と言われると難しいものだ」
カメラマン「新郎様、リラックスして笑ってくださーい。
一度、綺麗な新婦様を見てみてください」
「?」
無表情の謙信様が私を見おろしてくる。
端正な顔立ちの上、正装し、ワックスで髪を整えた謙信様は、心臓を打ち抜かれる程かっこいい。
白銀の雪がよく似合っている。
(かっこいいな、謙信様……大好き)
一瞬、二色の瞳が甘く煌めき、綺麗な口元が柔らかいカーブを描いた。
謙信「俺も舞が好きだ、誰もよりもな」
「!?ま、また勝手に人の心を読まないでくださいっ!」
カメラマン「ああ、新郎様がすごく良い表情だったのに、今度は新婦様が…」
残念そうな声に我に返る。
「す、すみません!」
早くしないと冷気で肌が赤くなると言われ、今度こそはと二人で見つめ合い、笑い、最高の一枚を撮ってもらった。