第37章 現代を楽しもう! ❀北の旅編❀
謙信「そうか……」
面倒な女だと思われないか心配だったけど、謙信様の注目度はそれくらい凄くてヤキモチを妬かずにはいられなかった。
心配をよそに、謙信様は面倒どころか私の言葉を心から嬉しそうに受け取ってくれた。
謙信様がラッシュガードのチャックを上まであげると、女の子達の残念そうな吐息が聞こえた。
謙信「お前もそんな風に怒る時があるのだな」
手を取られそっと顔を覗き込まれた。
色違いの目が嬉しそうに輝いている。
謙信「俺は舞のものだ。何も心配する必要はない。
誰が何と言おうと俺の心も体も、全部お前のものだ。愛している」
私の手を顔の高さまで持ち上げると、悪戯な色を滲ませたまま手の甲にチュッと口づけした。
「け、謙信様!周りにいっぱい人がいるのに、何するんですか!?」
謙信「ふっ、気にするな。行くぞ」
「え、わっ!?あの、子供達はっ!?」
謙信「大丈夫だ、浮き輪とやらを借りてくれば来るだろう」
謙信様は気分良さげに歩き出した。
視線を外すのが惜しいとでもいうかのように見つめられ、顔が熱くてしかたない。
周囲を蕩けさせるような笑みを浮かべ、手を引いてプールに向かう。
繋いだ手をぎゅっっと握って大人しくついていくと、さっきまでのモヤモヤとした嫉妬は跡形もなく溶けていった。
子供じみた態度を怒らないばかりか、安心させてくれる言葉をたくさんくれた。
一緒に居れば居るほど謙信様のことを好きになる。
「……」
胸がいっぱいで言葉がでてこず、無言で謙信様の視線を受け止める。
謙信「……?」
(大好き……)
謙信「俺もだ」
「!?わ、私、何もっ」
謙信「全部顔に出ているぞ。初々しい顔をして煽るのをどうにかしろ。抑えるのに苦労する」
頬がほんのりと染まっている。
「ふふ、すみません。無意識なので」
謙信「おまえは悪女になる才能を持ち合わせているとは知らなんだ」
「悪女!?そんなことないですっ!」
ポンポンと言葉を交わしながらプールサイドに近づいていく。
(デートみたい)
デートらしいデートをしたことがなかったから凄く嬉しかった。