第37章 現代を楽しもう! ❀北の旅編❀
「はぁ。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。まさか龍輝が謙信様に持たせたなんて全然気づかなくて」
謙信「謝るな。俺もきちんと確認せずに持ち去ったからな。それより女がこのような恰好で歩いていいのか?」
「ええ、水着ってこんな感じですから。周りの子達もそうでしょう?」
信玄様じゃないけど、もっと色っぽい水着を着ている子達がたくさん居る。
「この方が泳ぐときに楽なんです」
謙信「だが…他の者に見られたくない」
切なげにそう言われると、やっぱりいつもの水着を手直して持ってくれば良かったなと思う。
バタバタしていて直前に準備したから、水着の穴に気が付くのが遅かった。
「ごめんなさい。龍輝達と入る時の水着は長袖でしたし、下も足首まであったんですけど、穴があいてしまっていて……でも……」
謙信「でも、どうした?」
気にしないようにしていたけど気にせずにはいられない。
「私だって謙信様を他の子に見られたくないなって……思うんです」
つい口が尖ってしまった。
謙信様は自分のラッシュガードを手に持ったままだ。
文句のつけようもなく容姿端麗の謙信様は、さっきからたくさんの女の子達の注目を浴びている。
『見て!あの人かっこよくない?』
『細いのに逞しいよね』
『筋肉の付き方めちゃくちゃカッコイイ』
『一緒に居るの彼女さんかな、声かけたい』
『あんなにかっこよくてさ、どんな声してるか聞いてみたいよね』
(全部聞こえてる…)
キャッキャっと好奇心いっぱいの黄色い声を聞いていると、尖った唇がきゅっっとすぼまって、頬がプーっと膨らんできた。
結鈴が怒った時にする膨れっ面と同じだ。
謙信様級のイケメンが居たら騒ぎたくなる気持ちもわかるけど、なんだか子供みたいな独占欲が沸き上がってくる。
チラッと見ると謙信様を見ている子達は可愛くて、綺麗で、スタイルがいい子がいっぱいいる。
こんなに苛々するのはきっと自分に自信がないからだ。
子供を産んでからは少しムチっとした自覚はある。
ゆっくりお洒落なんてしてる暇もないし、髪だって今日は無造作に一本結にしているだけだ。
不機嫌な顔をして俯いた私を、謙信様は目を丸くして見ていた。