第36章 現代を楽しもう! ❀年末年始編❀
佐助「大丈夫。謙信様達も大分こっちの生活に慣れたから、何かあっても無難にやりすごしてくると思う」
「そうかな……」
佐助「それより手伝うことない?」
「あ、じゃあ、この上の棚に大きなお鍋とザルがあるんだけど取ってもらえるかな」
佐助「ここ?」
「そうそう。お鍋が大きいから両方扉を開けて出した方が楽だよ」
邪魔にならないよう、天ぷらの衣が入ったボールを持って脇にどいた。
「背が大きいといいなぁ。いつも踏み台を使わないと取れないのに、ひゃっ!!」
お鍋の蓋がずれていたようで、佐助君が持ち上げた拍子に滑り落ちてきた。
目の前にせまった鍋の蓋に目をつぶって備えたけど…
「あれ?」
来るはずの衝撃がなくて恐る恐る目を開けると、佐助君がしっかりとキャッチしてくれていた。
佐助「驚かせてごめん」
「ううん、私が蓋をちゃんとしておかなかったから。
ぷ、それにしても危うくお鍋の蓋で頭をゴーンとするとこだったね」
佐助「そんなことになったら謙信様に八つ裂きにされるよ。
でも某コントを再現するなら鍋の蓋じゃなく、タライだね」
「あんなの落ちてきたら死んじゃうよ、フフッ!」
笑い合っていると絶対零度の声が響いた。
謙信「………ほお?佐助、お前は舞のいたいけな頭にたらいを落とす気か。なれば今すぐ斬って捨てるが」
佐助君が『まずい』という顔をして身構えた。
佐助「気配を消して帰ってこないでもらえますか、謙信様」
謙信「逃げるな、佐助!どういうことか説明しろっ」
佐助君はお鍋を持ったまま逃走し、謙信様はそれを追いかけて行ってしまった。
「あぁ!お鍋っ!」
これじゃあ、お蕎麦を茹でられない。