第36章 現代を楽しもう! ❀年末年始編❀
人目があるので手を握れないのがもどかしい。
「いえ、聞いて欲しいです。だって気分が良くなったのは謙信様のおかげでもあったので」
謙信「俺の?」
「はい。あの宿で謙信様は私を『うさぎのようだ』と言ってくださったでしょう?
うさぎに触れている時、それを思い出したんです。
こんな可愛いうさぎにたとえてくれて嬉しいな、って」
あの時、うさぎに触れ、謙信様を近くに感じ、久しぶりに凄く気分が良くなった。
「傍にいなくても謙信様がくれた言葉で気分が良くなったんですよ。
こんな可愛い生き物にたとえてくれて嬉しかったんです。ありがとうございます、謙信様」
あの時の気持ちを思い出し、嬉しいと思った気持ちをそのまま伝えた。
翳っていた表情がみるみる甘さを含んだものに変わっていく。
謙信「今でもその気持ちは変わらない。お前はうさぎを思わせる動きや、愛らしさをみせる。
そうか…寝込んでいる時も、俺を思い出してくれていたのだな」
「もちろんです。ずっと…謙信様のことを想っていましたよ」
うさぎを撫でていた手が髪に伸び、そっと梳いてくれた。
それ以上触れてこない指先が切なくて、でも今は我慢する。
飼育員「それではソロソロお時間となりましたので次のグループと交換に……」
飼育員さんの声掛けとともに一時のふれあいは終わりを告げた。