第36章 現代を楽しもう! ❀年末年始編❀
(いつも?そういえばお城のうさぎが纏わりついてくるって言ってたよね)
謙信「城のうさぎたちも俺が居なければ庭に散らばって草を食んでいるのに、庭に降りた途端我先にと近寄ってくるのだ。
そうなると進退窮まって動けなくなる。ひ弱な生きものを蹴散らすわけにもいかず、最近は城の庭には下りないようにしていた」
「え……と、うさぎが集まってくる香りでも発しているのかもしれませんね。謙信様は良い香りがしますから…っ、ふ、ふふ」
(うさぎが寄ってくる人なんて聞いたことないっ)
もっふもふの可愛いうさぎと、近寄りがたい雰囲気の謙信様との組み合わせが面白すぎる。
謙信「舞、笑い過ぎだ」
「だ、だって、ギャップがありすぎて、ふふっ、謙信様って意外な特技をお持ちだったんですね」
謙信様の足元に隠れていた真っ白なうさぎが顔を出し、その子を抱き上げると赤い目をしていた。
(あ……)
「安土で、悪阻で寝込んでいた頃なんですけど……」
謙信「?」
うさぎを見つめながら昔の話をした。
「動物に触れ合うと病人の症状の緩和になると三成君が毎日ねこさんを連れてきてくれたんです」
安土で寝込んでいた頃の話はあまりしていない。
謙信様は黙って聞いている。
「でもある日、ねこさんが戻って来ない日があって、秀吉さんが代わりに白いうさぎを連れてきてくれた時があったんです」
白いうさぎの背を、あの時と同じように撫でた。
「手触りの良いうさぎに触れ、凄く気分が楽になって…それで……」
謙信「それ以上は良い。俺の気づかぬ間に安土の連中がお前を見舞って、心を癒していた話を聞くのは辛い」
目を伏せた拍子に、髪色と同じ色のまつ毛が震えた。
(あ……そんな顔をさせるために話したんじゃないのに)