第35章 現代を楽しもう! ❀お寺編❀
謙信様は並べた紙を端から順に開いて説明を始めた。
謙信「これは寺の設計図。原案と、改善後の2枚ある。
こっちが寺の設計が決まった後の外観を絵にしたものだ」
ご住職が驚いて固まっている。
謙信「そしてこれが寺の製作に加わった者達の名だ」
謙信様の手元を覗き込むと、
宮大工棟梁 〇〇
宮大工 〇〇、〇〇、〇〇…、…、…
仏師 ○○、〇〇
庭師 ○○
彫刻 ○○
というふうに、何を、誰が手掛けたかズラリと書かれていた。
今まで誰が造ったのか不明であったものが全て記載されていて、ご住職は言葉を失っていた。
謙信「これは龍と兎の石像の完成予想図」
墨で描かれた絵は今にも動き出しそうな繊細なタッチだった。
細い筆で描かれたその絵だけで価値があるように思えた。
謙信「そしてこれは俺が書いた礼状だ」
崩し字で書かれているので内容はわからなかったけど、手紙の最後に謙信様の署名があった。
内容を気にしている私に気が付き、謙信様は要訳してくれた。
謙信「製作を引き受けてくれたことに対しての礼と、先だって謝礼を送る旨が書かれている。
あの頃、直に礼が言いたくとも心を病み、死にかけていたからな。
これを書いたのはワームホールが開く直前だった」
「礼状がここにあるということはその方達に謝礼は…」
謙信様が心配ないと軽く首を振った。
謙信「旅立つ直前に同じ内容の礼状を書き、自室に置いてきた。
景勝と義元がなんとかしてくれただろう。
ワームホールが開いたと聞いた時、ここにある書が揃っていれば寺の製作者達の名を残してやれると考えたのだ」
「知らせを受けて出立までの短い時間にそんなことを考えたんですね」
佐助君の話では謙信様に知らせて出立まで15分足らずだったと聞いた。
寝ていた信玄様をたたき起こしたのを時間に入れても、本当に短い時間で考え、礼状をもう一枚書きあげたことになる。
それくらい謙信様にとってこのお寺の存在は大事で、手掛けてくれた人達に対して感謝していたんだろう。
そうして500年がたった今、その人達の名を明らかにしてあげようとしている。
(義理堅い方だと知っていたけど、本当に……)