第35章 現代を楽しもう! ❀お寺編❀
「はい。それで佐助君の隣に居る、背が高い方が武田信玄様です」
住職「た、武田信玄……」
住職が目を白黒させてフラリと1歩、後ずさった。
「だ、大丈夫ですか?気をしっかりお持ちくださいね」
住職「ありがとうございます。実は私は武田信玄の大ファンでして……」
「え?そうなんですね。ふふ、後でお話してみてくださいね。とても懐が深くてお優しい方ですよ。
ちょっと時代劇や教科書とイメージが違うかもしれません。それを言えば謙信様もですけど……あ、今降りてきたのが謙信様です」
車から降りた謙信様を見て、ご住職の目が驚きに見開かれた。
スラリとした佇まいに褪せた髪色に色素の薄い肌。
こちらに投げかけてきた視線は二色。
ご住職と目が合ったので『イメージと全然違うでしょう?』とアイコンタクトをとると、ご住職が同意するように頷いた。
謙信「………」
駐車場を降りた時点で謙信様は胸に迫るものがあったらしく、言葉少なに外観を眺めていた。
やがて気が済んだのか私と住職の所まで歩み寄ってきた。
隣に居るご住職の気配に緊張が混じった。
じゃり…じゃり…
スニーカーで砂利を踏み、現代の服を着こなして歩み寄ってくる姿は、ぱっと見だと『イケメンのお兄さん』だ。
でも近くに来るほどに、この世に馴染まない雰囲気が身体を覆っている。
以前謙信様に『お前は周りから浮き上がって見える程、異質な存在だ』と言われたのを思い出した。
一般人の私がそうだったんだから謙信様なら比にならない。
(ほんとだ、馴染んでない)
異質。その表現がピッタリだった。
歩みをとめ、私達に視線を留めると形の良い唇が動いた。