第34章 現代を楽しもう! ❀お勉強編❀
――――
――
謙信様がリビングでくつろいでいる時を狙い、私は1つお願い事をした。
謙信「崩し字を教えて欲しい?」
「はい、後々のためにも今のうちに覚えておいた方が良いと思うんです」
戦国時代に戻れば謙信様の妻として覚えなければいけないことはたくさんあるだろう。
姫として、妻として何か学ぼうと思った時に文字で躓(つまず)いてしまっては話にならない。
「書道の教室に通おうと思ったのですが、決まった時間を確保するのが難しいですし、謙信様の字はとても綺麗なので教えて頂きたいな、と。
手が空いた時でかまわないので……」
謙信「ああ、お前の願いとならば何でも聞いてやる」
「ありがとうございます!墨や筆がないので週末買いに行ってきますね」
謙信様の眉間にきゅっと皺が寄った。
謙信「俺を置いていくなよ」
「ふふ、はい。龍輝と結鈴も一緒なので近くのショッピングモールに行きましょう」
謙信「しょっぴんぐ…は買い物という意味だったか。
しかしこの時代の言葉は日ノ本と南蛮の言葉が混じり合っていてわかりにくい」
「日本人にしかわからない『和製英語』というものもあるんですよ。あ……」
謙信「どうした?」
「せっかくだからこちらに居る間、南蛮の言葉、一番主流の英語の勉強をしてみるのはどうですか?
信玄様の通院は1年くらい続く予定ですし、あちらに帰る前に英語に触れてみてはどうでしょう。
南蛮の使者の方と会う時に役に立つかもしれませんよ?」
謙信「英語……」
「はい。英語を教えてくれる場所があるので通ってみてはいかがですか?」
謙信「ふむ、悪くないな」
佐助君が換金して得た資金はうなるほど余っているそうで、それならお金の心配もなく色々できる。
謙信「良い考えだ。南蛮の使者達はこちらが言葉を知らぬことを良いことに、通訳と結託し商談を有利に進めようとするきらいがある。
対等までいかなくとも、せめて何を話しているかわかれば足元を見られることもないだろう」
話はトントンと進み、謙信様は英会話教室に通い始めた。
気が付けば信玄様も一緒に通っていて、謙信様は英語とスペイン語、信玄様は英語とポルトガル語、とそれぞれ二か国語を同時に学んでいた。