第33章 蜜月の始まり(R18)
龍輝「ママー」
結鈴「おはよー」
階段向こうの扉が開く音がした。
何も知らない二人が階段をドタドタと降りていく音がするが、舞は目を覚ます気配はない。
柔らかい薄茶の髪を何度か梳いて、額に口づけた。
謙信「ゆっくり眠っていろ」
舞の寝顔を堪能したかったが階下で龍輝達が『あれ?ママー?』と呼んでいる声がする。
放っておけば俺を探してこの部屋に来てしまうだろう。
そっと部屋を出て階下に降りる。
謙信「母は具合が悪いそうだ。寝かせてやれ」
結鈴「えー?ママ、大丈夫?」
龍輝「ごはん………お腹すいた」
謙信「待っていろ、俺が作る」
二人の目が好奇心で輝いた。
俺と舞をそのまま幼くしたような二人。
何度見ても愛しい存在だ。
結鈴・龍輝「「楽しみー♡」」
謙信「期待すると損をするぞ。
母に比べれば俺の料理など足元に及ばん」
結鈴「いーよー」
龍輝「パパの料理初めて、楽しみだなぁ」
お前が目を覚ましたら伝えよう。
ありがとう、舞
俺を愛してくれて
俺の子を産んでくれて、ありがとう
これからはずっと一緒だ……
昨夜は伝えられなかった『いつか…』の続き。
子を産むのは大仕事だと、産んでからも大変だと重々承知している。
だが…『いつか』また……俺の子を産んでくれるか。
胎内に根付いた命が、舞の身体を変化させていく様を傍で見ていたい。
お前が赤子を腕に抱いている姿を見たい。
赤子が結鈴や龍輝達のように日々成長していく様を見守り、育てたい。
無事に500年前の越後に帰れたなら、改めて舞に願い出よう。
それまでは4人の絆を深め、慈しみ、愛すると誓おう。