第33章 蜜月の始まり(R18)
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私の生家は階段を上がってすぐ左手に私と子供達が寝ている部屋がある。
右手に進むとトイレと洗面台があり、ベランダに出るガラス戸を通り過ぎて一番奥が生前、父が使っていた部屋だ。
私と子供達の寝室は4人で寝るには狭すぎて、謙信様には父の部屋を使ってもらっていた。
謙信「俺は狭くてもかまわん」
謙信様はそう言ってくれたけど、子供達は寝相が悪くて転げまわるし、朝起きる時間も違うので別々の部屋で我慢してもらった。
ドサ……
柔らかなベッドに押し倒され、ギュッと抱きしめられた。
「ベッドにはもう慣れましたか?」
フレームは父が使っていた物だったけど、謙信様が使うならとマットレスだけ新調した。
謙信様は初めてベッドを目にして『これが褥なのか?』と恐る恐る寝転んでいた。
どうやらベッドの高さに心許ない感じがしたらしい。
謙信「ああ。最初はこの弾力と高さに違和感があったが、もう慣れた。最近は心地良いと感じる」
「ふふ、良かったです。
それにしても謙信様にこうしてじっくり抱きしめられるの、久しぶりですね」
謙信「二人が居ると邪魔をしてくるからな。
それに直(じき)に佐助と信玄もこの家に帰ってくるだろう。そうなればますますお前に触れられなくなる」
私を抱く腕にきゅっと力がこもった。
「そうですね、流石に皆の前で抱きしめられたら恥ずかしいです」
謙信「やはり夜は共に寝たい。
起きている間は触れられないにしても、その分夜はお前を抱きしめていたい。
龍輝と結鈴の寝顔も毎日眺めたい。
お前たちの声が寝室から聞こえる度に、つまはじきにされている気分だ」
「ふふ、謙信様って一人でも平気って顔をしているのに、内心ではそんな風に思っていてくれたんですね」
謙信「お前のように思っていることが丸わかりの顔とは違うのでな」
暗い部屋でフッと笑う気配がした。
謙信「舞………」
熱い吐息とともに低い声で呼ばれ、ピクンと身体が反応した。