第32章 眠り王子に祝福の…を
「信玄様!?」
信玄「……め」
「なんですか?信玄様」
かすかな声を聞き洩らさないよう唇に耳を寄せた。
信玄「……ひ、め」
(私を呼んでる?)
「はい、信玄様。お傍に居ますよ」
手をとって答えた。
信玄「姫……ありが…とう」
そう聞こえた。
(信玄様がしゃべった!)
嬉しさがこみあげ、握り締める手に力がこもった。
「信玄様…。目をゆっくり開けられますか?」
そっと瞼をなでると長い睫毛が震えた。
ゆっくり、本当にゆっくり信玄様の瞼が開いた。
「っ!」
傍で見守っていた私は感動して、歓声をあげたいような、泣きたいような感情に襲われた。
看護師さんや謙信様を呼ばなきゃと頭で思っているのに嬉しすぎて動けなくなった。
ぼんやりと天井を見つめていた信玄様の視線がゆっくりと私へと向けられた。
信玄「姫……」
小さく掠れた声に返事をする。